今回はイギリスのファシリテーターPenny Walkerさんによる、場づくりやプロジェクトにおけるステークホルダーマネジメントに関する勉強会のレポートです。今回の記事はファシリテーターやコンサルタントの方向けの記事になります。
昨年からIAFという、世界中のファシリテーターが学び合うネットワークに参加しています。今回、そのIAFの日本支部が主催で、イギリスのファシリテーターPenny Walker さんによる勉強会が開催されたため、「英語か…」とドキドキしながら参加してきました。
今回、Pennyさんがよく現場で使うステークホルダーを分析する方法を教わったので、ぜひ皆さんに共有したいなと思って記事を書いています。
ワークショップのデザイン、その前に!
ワークショップなどの話し合いやアイデア創発の場は、事前の準備や設計が命であることは、少し経験があるファシリテーターなら誰もが知るところだと思います。
しかし、設計は「どんなプロセスで場を進めるか」にフォーカスがあたっていることが多い。今回は、特定のプロジェクトに対して、
- 誰をどんな場に招くのが最も効果的なのか
- プロジェクトに関わるステークホルダーとのコミュニケーションのとり方
- コミュニケーションをとるときの効果的な視点
について学ばせていただきました
*ちなみにこちらの方法はPennyさんのブログで全て公開されているものです。英語分かるよって方は一番下にリンクを貼っていますので、そこまですっ飛ばしてください。
ここからの内容は、実際に行った内容を記載していきます。もし今、何かしらプロジェクトを始める段階の方が読んでいたらぜひ、ご自身の事例だとどうなるかイメージしながら読んでみてください。
ステークホルダーを分析する
今回、体験的に学ぶために、参加者5人がグループになり、身近なテーマを決めてワークを体験しました。私たちは「都内に保育所を建設するかどうか?」という、港区で児童相談所(児相)や保育園をめぐり、一部住民が反発する問題をテーマにしました。
1. 最初に、テーマに影響するステークホルダー(関係者)を具体的に8〜10人あげる。
例えば、私たちのチームは下記の人たちを選びました。
・その地域に住んでいる子ども
・その両親
・その地域の住民で、保育園建設に賛成している人 ( 今後子どもを持つ可能性がある人など)
・その地域の住民で、保育園建設に反対している人 ( 地域のイメージに価値を置く人など)
・不動産業者(地価の上下に影響を受ける)
・渋谷区の行政担当者
・保育園の経営者
・保育士
こんな感じで1つずつ付箋に書き出します
2. 次に付箋を 影響度 × インパクト のマトリクスに話し合いながら分類
- 影響度・・・そのテーマ自体へ影響を与えるステークホルダー
- インパクト・・・そのテーマの決定により影響(=インパクト) を受けるステークホルダー
つまり、「都内に保育所を建設するかどうか?」というテーマだと「その地域に住む子ども」は建設されるかどうかの影響(インパクト) を大きく受けることになりますが、建設するかどうかの決定にそこまで影響力を持たない、ということになります。
ワークの説明をするPennyさん。Pennyさんはイギリスでご自身が行ったプロジェクトを事例に説明してくださいました。
3. 分類したものを大まかに3分割
分類の方法なのですが、こんな感じで分けます。
そして、それぞれの分類のステークホルダーへ、コミュニケーションのとりかたを変えるのだそうです。この後の章でもう少し詳しく書きますが、それぞれの方法は下記のように分けているそう。
1のエリアに入っているステークホルダー (主に影響もインパクトも高い人たち)
主に「一緒に話し、作り上げる」
2のエリアに入っているステークホルダー
主に意見や想いを「聞く」
3のエリアに入っているステークホルダー
主に「伝える」
それぞれのステークホルダーへ、どんな場を提供するか?
私たちはいろんな関係者を一気に何とかしようとする場を開催しようとしがちです。もちろん、テーマや状況によってはそれが大切なこともありますが、分類したステークホルダーごとに「どんなコミュニケーションに主眼をおいた場を設計するか」をPennyさんは提案されていました。
説明中のPennyさん。資料は日本語で(娘さんが日本語留学中なんだそう) 準備してくださいました。
先ほどの分類と合わせて考えてみるとイメージしやすいと思います。
私たちが使ったテーマだと、
① 主に一緒に話し、作り上げるコミュニケーションを意識すべきステークホルダーは
その地域に住んでいる人、渋谷区役所の方
② 主に意見や想いを「聞く」だと
その地域の不動産業者や、両親
③ 主にプロジェクトなどの経緯や活動の様子を「伝える」だと
保育園の経営者やそこで働く人たち
となりました。短い時間で簡易的にワークを行なっているので、上記が正解とかではないのですが、なんとなく「誰に、どんな場を提供すること」が効果的かということが伝わるのではないでしょうか。
こんな感じで、誰にどんなコミュニケーションの場や手段をとろうかと、プロジェクトの全体設計をしているのだそうです。それぞれのステークホルダーとの話し合いの中では、
- 決まっていること (日程、場所などの変更できないこと)
- 変更可能なこと
- オープンでまだ何も決まっていないこと
という視点を意識しているとのこと。
この方法を上手く活かすために…
プロジェクトの全体のデザインを行う時、Pennyさんはこの方法はよく使うとおっしゃっていました。効果的に使用するコツは
ということでした。 プロジェクトの全体を設計する時には今後、私自身も使ってみようと思います。他にも記事を読んで「こんな時に使ってみては?」というアイデアが湧いた人がいましたら、ぜひ教えてください。